ホワイトカラー・エグゼンプション

ホワイトカラー・エグゼンプションとは

ホワイトカラーエグゼンプション(white collar exemption)は、ホワイトカラーの労働時間規制適用免除制度のことで、対象となるホワイトカラー労働者には現在定められている「1日8時間、週40時間」の労働時間規制を適用せず、残業代を支払わない制度のことです。

2005年6月に経団連が提言をし、厚生労働省で検討され始めたのがスタートですが、マスコミに「残業代ゼロ法」と批判されたり、全労連、連合、全労協などの労働団体や、労働者に厚い支持層がある野党の強い反対にあい、成立の目処は立っていません。(2008年1月現在)

ホワイトカラーエグゼンプションが検討される背景には、無駄な残業代(人件費)を減らしたいという企業側の思惑があります。サービス残業が批判されることが多いのですが、反対に給与を増やすための無駄な残業があるのも事実です。また、時間が足らなければ残業すればいいという感覚から、業務をだらだらしてしまうこともあります。これらは無駄な人件費として企業利益を圧迫しますので、企業側経営者側としてはできるだけ避けたいのが本音でしょう。

ただ、ホワイトカラーエグゼンプションの制度を企業が悪用すれば、労働時間を合法的に長くすることができ、なおかつ過労問題も労働者側に押し付けることができるという問題点もあります。

ホワイトカラーエグゼンプションの制度は、労働者側から見れば、残業が多い人ほど給与を減らされることになり、なぜたくさん働いているのに給料が減らされるのかという不満があります。経営者は利益を上げてくれるものに給与を支払いたいと考え、労働者は売上や利益は関係無しに労働した分だけ給与が欲しいと考えます。このように双方のズレがある限り、ホワイトカラーエグゼンプションの課題はつきまとうことになるでしょう。

ホワイトカラーの業務は、時間当たりの売上や利益がはっきりしないものが多いのが特徴で、特にクリエイティブ業務、や調査・研究などの、知的生産業務においては、1時間働いたらいくらの売上が上がるという計算はできません。こういった業務は、欧米では年俸制をとるところが多く、日本の経済界もそれを導入したいと考えています。

実際に、クリエイティブワークでは、企画やアイデアを創出する業務になりますので、時間にとらわれないスタイルが望まれます。


ホワイトカラーエグゼンプションの問題点

ホワイトカラーエグゼンプションには、対象となる職種や報酬の決め方、過労に対する責任のあり方などさまざまな問題や課題があります。

ホワイトカラーエグゼンプションを正しく利用すれば、労働に対する正しい報酬が支払われることになり、労使双方にメリットが出ます。

しかし、現実には「労働力は最低限に抑えたい」労働者と、「人件費を最低限に抑えたい」経営者側との間で、深い溝があります。また、労働者の中でも「仕事をもっとしたい」という人と「できるだけ仕事はしたくない」という人に分かれており、意見も二分されています。伊藤忠商事の丹羽宇一郎氏は「スキル向上のために残業代なしで土日も出社したいという若い人が沢山居るが、ホワイトカラーエグゼンプション制度がないために出社許可が出せない」というジレンマを抱えていると言います。

この溝を埋めるために、ホワイトカラーエグゼンプションを適用する対象者の条件がいくつか検討されてきました。(年収の枠組みや職種など)しかし、今のところ妥協点は見つからず、ホワイトカラーエグゼンプション成立の目処は全く見えていません。

また、与党としても労働者層の支持を意識して、積極的に推進していないというのも、ホワイトカラーエグゼンプションが成立しない原因となっています。

ホワイトカラーエグゼンプションの今後

ホワイトカラーエグゼンプションに限らず、裁量労働制やフレックスタイムなど、常に労使の課題は存在し続けます。この背景には、労使のメリットが一致していないことがあります。

できるだけ人件費を抑えたい使用者と、できるだけ人件費(給与)を出して欲しい労働者。常に相反する立場にあるため、ホワイトカラーエグゼンプションのような制度の成立には、とても高い障壁があると言えるでしょう。

ただ一部の労使間では、先ほどの伊藤忠商事の例のように、スキルアップや自分の活躍の場を広げたい労働者と、法的にそれを許可できない使用者という課題もあり、ホワイトカラーエグゼンプション制度の成立を望む声があるのも事実です。

採用時の契約でホワイトカラーエグゼンプションを双方が望む場合は導入を許可するなどの、柔軟性をもった制度導入などを検討する必要があるでしょう。

労働団体にも、労働者を一律に扱うのではなく、もっと働きたい人がいるという現実をしっかり受け止め、経営者と敵対する姿勢だけでなく、労働者の質を上げていくことも検討する必要があるでしょう。

労使ともに考えなければいけない課題の一つとして、日本の経済は望む望まないに関わらず、グローバリズムにさらされているということです。

世界的な競争力をつけるためには、自国内の都合だけを考えるだけでなく、他国の労働力との差別化を図らなければいけません。ホワイトカラーエグゼンプション導入により、労働の質を高める努力を労使共に考えなければ、日本経済の存続すら危ういことになりかねません。

ホワイトカラーエグゼンプションは、日本経済の今後を考える上で、とても重要な制度であり、今後もしっかり検討され、できるだけ早い制度成立が望ましいと言えるでしょう。